滝夜叉姫
たきやしゃひめ
東の国の新皇を名乗った平将門(たいらのまさかど)は、天慶(てんぎょう)の乱で藤原秀郷(ふじわらのひでさと)・平貞盛(たいらのさだもり)の軍に敗れます。
平将門の娘・五月姫(さつきひめ)は、父の無念を晴らすため、貴舟の社(きふねのやしろ)に「願」をかけ、満願と共に貴舟の神より妖術を授かります。
五月姫は、名を「滝夜叉姫」と改め、父将門の因縁の郷、下総の国・相馬(そうま)の地に立ち戻り、多くの手下を従えて反乱を企てます。
陰陽師・大宅中将光圀(おおやのちゅうじょうみつくに)らは、姫征伐の朝命を奉じ、下総の国へと向かいます。
陰陽の術と邪心の妖術との激しい戦いの末、滝夜叉姫の朝廷に対する復讐は成らず、敗れるという物語です。
紅葉狩
もみじがり
時の武将 平維茂とその一行は、信州戸隠山に向かいます。
秋の戸隠山のあまりの美しさに紅葉狩を楽しむ維茂一行は、道に迷ってしまいます。
一行が一軒の館に差し掛かると、美しい女性たちが紅葉狩の宴を開いているのに出会います。
実はこの女性たちは、平維茂に恨みを抱き命を狙っていたのです。
維茂は不審に思いながら道を尋ね、通り過ぎようとしますが、女性たちは言葉巧みに宴に加わるよ
う勧めます。
宴に加わった維茂一行は勧められるままに杯を重ねるうちに鬼女の妖術に掛かり倒れてしまいました。
すると夢の中に八幡大菩薩が現れ、維茂を救い、神剣を授けます。
我に返った維茂一行は、鬼女に闘いを挑み、退治するという物語です。
土蜘蛛
つちぐも
大和国(やまとのくに)の葛城山に、太古の昔より住み着いている土蜘蛛の精魂が、源頼光(みなもとのらいこう)の侍女胡蝶(こちょう)に化け、典薬の守(てんやくのかみ)からの使いと偽って頼光に毒を盛ります。
ついに念願を果たしたとばかりに飛びかかる土蜘蛛に必死で対抗する頼光は、「名刀髭切り丸(ひげきりまる)」で斬りつけ深手を負わせるのですが、正体を見破られた土蜘蛛の精魂は、糸を吐きながら逃げ帰ってしまいます。
源頼光は四天王を集め、土蜘蛛退治を命じますが、この時「髭切り丸」を「蜘蛛切り丸」と改めて四天王に授けました。
葛城山の岩屋についた一行は、土蜘蛛の妖術に悩まされながらも、大激闘の末、蜘蛛切り丸をもってこれを退治するという物語です。
八岐大蛇
やまたのおろち
出雲の国に暮らす足名椎(あしなづち)・手名椎(てなづち)老夫婦には八人の娘がいました。しかし年毎に一人またひとりと大蛇に飲み取られ、七人まで娘を失いました。そしていよいよ八人目の姫が飲み取られる季節となり、老夫婦と八人目の姫・奇稲田姫(くしいなだひめ)が嘆き悲しんでいると、高天原(たかまがはら)から舞い降りた須佐之男命(すさのおのみこと)が通りかかり、その理由を聞きます。
命は、大蛇退治を決め、老夫婦に八塩折(やしおり)の毒酒を造らせ酒
を入れた樽の後に姫を立たせます。やがて、どこからともなく大蛇が現れ、毒酒に映った姫の影を飲み干していきます。酔いの回るほどに暴れ狂い、しだいに酔い伏してしまいます。これを待ち構えていた命は、壮絶な戦いの末、大蛇を退治します。
大蛇の腹を切り裂くと、一本の刀が出てきます。これを天叢雲剣(あめ
のむらくものつるぎ)と名づけ、天照大神(あまてらすおおみかみ)に捧
げます。そしてめでたく奇稲田姫を妻とし、平和で豊かな出雲の里で暮らしていくという物語です。